北茨城地域医療教育ステーション

北茨城市民病院附属家庭医療センター

茨城県北茨城市中郷町上桜井844-5

多職種連携で地域包括ケアの構築に取り組む

北茨城地域医療教育ステーションは、地域を基盤にした医学教育、市民の健康づくり、地域医療の充実を目的に、北茨城市との連携で2012年4月から始まった事業です。
北茨城は茨城県最北端の市で人口4万人。かつては炭鉱の町として発展し、現在は工業、漁業、農業、観光業のまちです。太平洋の暖流に接しているため、緯度のわりには冬でも暖かい、住みやすい気候です。対人口あたりの医師数が少ない茨城県の中でも際立って医師の少ない地域で、住民の生活を支えるプライマリ・ケアを充実させるべく、2015年6月に北茨城市民病院附属家庭医療センターが開設されました。

診療所の特徴

センター長 五十嵐 淳

住民にとって地理的にも心理的にも身近にいて、家族ぐるみで、からだのことも心のことも何でも相談できる家庭医療を実践しています。また、人生の最期まで住み慣れたこの地で暮らしたいという思いに応えられるよう、地域の訪問看護ステーションや介護関連事業所と緊密な連携をとりながら在宅医療に取り組んでいます。

標榜科目 内科、小児科、心療内科
患者数 外来診療 約100人/日(小児が約10%)
訪問診療 約380件/月

医学生の実習

家庭医療センターには学生用宿泊室が4室あります。ここに1-2週間滞在し、診療だけでなく、地域を基盤にした保健・医療・介護・福祉の連携を学びます。全ての実習を通じて、住民の生活を知り、この地域で健やかに生活するための強みと問題点を探り、何らかの提言をするような、地域診断の視点を持って取り組むことを課題とします。

スケジュールの一例

1週目

午前

大学

午後

大学

午前

オリエンテーション
外来

午後

訪問診療

午前

行商サービス同行

午後

外来

午前

訪問診療

午後

外来

午前

小中学校がん教育

午後

地域視診

2週目

午前

外来

午後

訪問診療

午前

訪問診療

午後

外来

午前

へき地巡回診療

午後

へき地巡回診療

午前

訪問診療

午後

地域診断
仕上げ

午前

外来
まとめ

午後

(移動)
大学にて報告会

各実習内容の説明

外来

診療実習では問診と身体診察、採血や皮下注射などを実践します。受付実習では事務スタッフの役割と医療スタッフとの連携を学びます。また待合室では来院者から北茨城のことも聞いてみましょう。

訪問診療

1回に5-7軒を訪問します。自宅・地域で生活することの意味、家族の役割、他の専門職の役割などを理解するチャンスです。

巡回診療

山間部無医地区の住民のための巡回診療に1日同行して実習します。へき地ならではの暮らし、医療に目を向けてみましょう。

行商サービス

車の運転ができなくなると買い物に困ります。買い物ができないと住み慣れた地域での生活が難しくなります。その解決策として市の委託で商工会が行っている移動販売サービスに同行し、職員や地域住民の話しを伺ってみましょう。

小中学校がん教育

がんとは何か、がんの予防、がん検診、がんの治療について、学生が講師となって実施します。子どもたちががんについて理解を深めると同時に、親など家族への教育波及効果を狙っています。

健康リーフレットの作成

健康に役立つA4両面1枚のリーフレットを作成し、外来待合室で配付・説明をします(がん教育のない2週間グループ)。

地域視診

市内の一地区を選んで、歩きながら町並み、人々などを観察します。時には出会った人にインタビューをしたり、お店に入って話を聞いたりします。テーマは「この地で人々が幸せに暮らし続けるために」です。

観光

観光地は地域の自慢の場所であり、歴史を伝える場所です。あき時間を使ってミニ観光をしてくることを推奨しています。

学生の感想

  • その地域の特徴を調べたりインタビューしたりしながら考えるのは、慣れておらず大変だったが、それを行ったからこそ地域の問題や魅力を見つけることができ、地域の一員になれた気がした。
  • 基本的な診療技術を実際に行うことで、技術的にも向上できたと感じた。
  • 実際にお宅に伺ったことで、その人を取り巻く環境をより直接的に感じることができた。
  • 無医地区での実習では、地域の暮らしや特色ある産業を詳しく聞くことができ、大変興味深かった。
  • ある患者さんから、診療所の医師に長年にわたって世話になり、会うだけでこれまでの不安がすっと消えることがあると聞き、地域での医師の役割がいかに重要かを感じた。
  • 小学校の予防教室、元気ステーションの取り組み、子育て支援の取り組みなどを見学することで地域の課題や取り組みを知ることができた。課題には地域ぐるみで取り組むことが大切であり、医者は地域の医者だという自覚が必要だと思った。
  • 医師だけでなく、看護師さんや事務スタッフの皆さんが気さくに話しかけてくれて、とてもリラックスして実習できた。

指導医からひとこと

ここでは、医学を学ぶだけでなく、医療は何のためにあるのかということを考えながら実習していただきたいと思います。診療所内外で、患者さんだけでなく地域の人々の声を是非聴いてみて下さい。患者中心の医療とは?家族ぐるみで診る意味は?地域を診るとはどういうことか?などが見えてくると思います。
5,6年生にとっては、これまでの各科ローテート実習で得た知識と技術を統合して力を発揮する場でもあります。2週間の間にも診察や採血は上達しますので、それも楽しいと思います。
実習中は、ここの医師になったつもりで取り組み、プライマリ・ケアの魅力を感じていただければ幸いです。

指導医 横谷省治