臨床推論アドバンストコース 開催しました
2011年6月27日 筑波大学医学群にて
1.臨床推論の基本と応用
前野 哲博 教授
2.感度,特異度,検査前確率,LR
横谷 省治 病院講師
3.推論ルールと症例演習
徳田 安春 教授
本学の4年生を対象にしたセミナーですが、総合診療科実習中の5年生、朝一番に試験を終えたばかりの6年生、そして他大学の6年生、総勢11名が参加してくれました。
午前のセッションは、前野教授による「臨床推論の基本と応用」。試験問題を解くのと違って、臨床では挙げた鑑別診断の確率の合計が100%近くになるまで、頭を使わなければいけない、というお話しから始まりました。部位と病理変化のマトリックスを用いることで漏れなく鑑別を考えることができるが、それをどう絞り込んでいくかという、臨床推論の重要な目の付け所を明快に解説されました。後半は、短い病歴を聞いて鑑別の分岐点になり得る質問を、3秒でズバッと繰り出すというゲーム感覚の演習を行いました。参加者からはよく考えられた質問が次々出てきて、教員を唸らせるものもありましたが、やはり前野教授の明快な解説は、誰もが納得でした。
2つめのセッションは昼食をとりながら開始となりました。横谷が担当し、感度、特異度、検査前確率、尤度比を理解し、臨床的に使えるようになるのが目標です。計算式が登場するため、誰もが敬遠するこのテーマ。前半では役立つ検査はどういうものか、疾患が「否定的(確定的)」と言えるのはどこまで確率が下がった(上がった)時か、といった理解を深めていきました。後半では、実際の臨床のシチュエーションで生まれる疑問に対して、文献を探して診断指標を検討したり、病歴や診察で得る情報の感覚的なインパクトの大きさと、実際のLRを検討したりしてみました。
最後のセッションは、徳田教授による「推論ルールと症例演習」。臨床推論の基本ルールのおさらいの後、”Looking for zebra”、”Post hoc ergo propter hoc”、”Occam’s razor”などなどの推論ルールないし陥りやすい誤謬について、例を挙げながら解説されました。続いて、Clinical pearls 。これは理論ではなく、臨床家としての豊富な経験に裏打ちされた「格言」です。一同楽しみながら、何度も「へ~」と声が出ておりました。最後は実際のケースを再現し、頭を絞って鑑別診断を考えていきました。新たな情報が加わる度に、鑑別診断がダイナミックに変化していく様を臨場感を持って体験できました。上手に学生の回答を引き出す徳田教授と、それに応える学生のレベルの高いこと。
充実した一日でした。10時から16時過ぎまで、参加した皆さんお疲れ様! (横谷)