地域医療教育 視察と討論の会に参加しました!
平成25年11月21~22日、日本医学教育学会・長崎大学医学部共催 地域医療教育(長崎五島での離島医療教育)視察と討論の会 に参加しました。1日目は五島列島最大の福江島の施設、2日日は小離島を中心に見学させていただきました。
以下、長文になってしまいましたが、各施設で感じたことをご報告したいと思います。
初日、長崎大学のバスではじめに向かったのは福江総合福祉保健センター。長崎大学の医学生・歯学生が、住民の方を対象にヘルスプロモーション実習を実施しているところを見学させていただきました。参加型のレクチャーで、スライドもわかりやすく、学生さんがとても頼もしく見えました。このような発表ができるまでには、先生方の手厚いサポートがあることが感じられました。
次に五島の中心街から車で20分ほどの内陸部にある山内診療所へ。2名体制の無床診療所で、2名の医師が1週間毎の交代制で勤務されており、ほぼ全科対応をされているとのことでした。ご説明くださった先生は勤務のない時間を利用して研修に出かけスキルアップされてい
るとのことで、幅広いニーズに対応するために研鑽を積まれているお姿が印象的でした。
院長先生にはお会いすることはできませんでしたが、院長先生の農地にもお邪魔させていただき、飼育されている牛や馬、本格的な炭釜等々を拝見し、医師として地域の方々の健康を支える一方、地域の暮らしに溶け込み暮らしを楽しんでいらっしゃるお姿を想像しました。
次に五島中央病院に伺いました。院内には長崎大学離島医療研究所もありました。医師一人体制の診療科や、週一回の外来診療のみの診療科もありますが、ここでは遠隔画像伝送システムや本土までのヘリコプター搬送も活用され、地域の方々の健康を守っている病院であることが感じられました。
院内見学後、講義室にて「地域医療教育視察と討論の会」が行われました。この会に医学部・歯学部の学生さんはもちろん、市議会議員さんなど行政の方、地域住民の方も参加しておられたことに驚きました。大学と地域との緊密な連携、強い信頼関係があることが感じられました。地域住民の方が、「地域住民が五島で医療人を育てるという使命感を持つことが必要」とおっしゃられていた言葉が強く印象に残りました。
2日目、五島保健所実習見学後、福江港より海上タクシーで小離島へ。椛島(住民160人)、赤島(住民16人)、黄島(住民49名)を見学させていただきました。
椛島の伊福貴診療所の院長先生はもともと病理医として勤務しておられた先生で、60歳近くになってから離島で働くことを考えられたとのこと。その使命感を支えているものは一体何なのだろうか・・と思いました。
次に住民16人の赤島へ。島にある出張診療所は巡回型診療所で、週1回、開かれるとのことでした。赤島には水道がなく、必要な生活水は雨水を貯めているとのことでした。水上タクシーでの移動中に見えた黒島は人口が減少し、今では住民が高齢者2名となっておられるとの説明に衝撃を受けました。人は、それでも、住み慣れた場所に住み続けるのだと思いました。
最後に伺った黄島では、住民の方々とのバーベキューが行われました。五島牛、五島豚、伊勢エビ、イカ・・・どれもこれまで食べたことがないと思える位に美味しいものでした。これほどまでに歓迎していただける背景に、離島医療を支えてきた長崎大学と地域との深い信頼関係があることを感じました。
離島の医療環境は厳しく、緊急時に必要な医療が受けられない危険もあるかもしれません。それでも、島で健康に暮らし、最後まで苦しまずに生活していくことを望んでおられることを感じました。
離島では、人口が高齢化し、医療者不足が深刻となっていました。それはある意味、超高齢社会に突入した日本の医療を、一足先に経験しているようにも思えました。そこには、私達がこれから直面する超高齢社会にどのように対応するのかのヒントになるような部分も多くあると思います。
現在の離島医療は、その地域に従事する医療者の使命感に支えられている部分が非常に大きいと感じました。このような医療者を継続的に見つけることは容易なことではないと思われ、今後も地域医療を支えるシステムを模索していく必要があると思いました。その一つの鍵は、教育にあると思います。地域の現場で地域医療に従事する医療者の姿を見て、地域住民からの深い信頼を感じることで、地域医療を支える医療人が育っていくのではないでしょうか。大学は、時代のニーズに合った医療を提供できる医療人を育成する必要があり、各大学で展開する地域医療教育の重要性は、ますます高まっていくものと思われました。
このたびはこのような貴重な機会に参加させていただき、大変密度の濃い、充実した2日間を過ごすことが出来ました。長崎大学離島医療研究所の皆様方に深謝申し上げます。
(前野貴美)